2019年9月10日火曜日

なつかしい「紙芝居」。感情を入れて語る女性。素直に受ける

ホームの午後。どこから来られたのか、1人の女性が、紙芝居を始めた。大きな帽子をかぶり、荷物を横に置いたまま、椅子に座り、からだは動かさず、最初から、なめらかな口調で途切れる事なく、しゃべりつづけた。先ずホームの位置や、風景をほめる。自分の育った場所を紹介する。一方的に、とにかく話つづけた後、そのまま「3つの紙芝居をします」と絵を広げた。慣れた語り口で、抑揚をつけ、感情を入れて物語は進んだ。
★紙芝居は、3つ、あった。原爆の物語で、「被爆した娘が通う学校の庭に、桜の木を植えて、育つ話」。次に「被爆した娘が、顔や身体に熱線をあびて、ケロイドになり、苦悩の人生を過ごした話」。この娘さんについては、私も自宅におじゃまして、取材し、写真も撮り、記事にも書いた。絵には、その娘さんの顔は、普通に描かれているのが、救いだった。93歳で亡くなった、と逝かれた歳を知った。
★原爆の話を聞きながら、私も語り部を努めているが、絵で語られる出来事と、実際に被爆の体験には、大きな隔たりがあるのを感じた。ただ、紙芝居を見て、「原爆は恐ろしい」「2度と戦争があっては、ならない」「核兵器の廃絶をの叫び」それは感じた。実際に被爆者が老齢化した、いまは、絵を見せながらも、語りつぐべきだと思う。
★2つの原爆の話の後、日本昔話から「ツルの恩返し」の紙芝居が語られた。ツルを助けたお爺さん。「夜中に、織るところを見てはいけませんよ」と姿を変えた娘がいう。のぞいて見たのは、お婆さんだった。
★3つの紙芝居の後、「ふるさと」「赤とんぼ」「地元の民謡」など一緒に歌った。40分間あまりを1人でこなす、この女性。淡々と語る、その動作の中に、やはり、その人ならでの才能を感じた。時を押し切る自信。平和を告げたい確信。経験の積み重ねの安心。そのような「目には見えない」チカラを、この女性から受け取った。

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