ある日の夕方、廊下の窓から見えた。すばらしい光じゃないか。自然は美しい。朝が明け、夜は沈む。音もなく、天空も変わらない。変わるのは人間だけだ。
★「認知症」の知能テストがある。いつも春になると、看護師から呼ばれて、問われて、答える。これが一番スカン。「今日は何曜日?」「野菜の名前を10言いなさい」「5つの物を見せますから、覚えとって、ね。後で聞きます」「100から7引きなさい、また7を引きなさい」
★この有名な「知能テスト」を始めた精神科のお医者さんが誰であるか、テレビで知った。「痴ほう」と呼ばれていたのを「認知症」の言葉に変えた、優秀なお医者さんだった。何千、何万の患者さんを診てきたであろう。戦後、最初に「認知症」に取り組んだ、著名な権威あるお医者さんだった。そのお医者さんが「認知症」に罹って、病んでいるとテレビに姿が映った。「人間って、なんと、ふしぎな存在だ」「人間って、まったく、わからない」と、テレビを見ながら大きなショックを受けた。おそらく、このテレビは大きな反響を呼んだことだろう。「人間って存在は、最後まで、分からぬものだ」
★そのお医者さんは、デイケア・サービスに通っている。皆さんに交じって、「アップップ」「アップップ」と言って、口を閉じて、ふくらませる。これは、そのお医者さんが考案したリハビリだそうだ。それを本人が「アップップ」とやっている。見ていて胸が痛くなった。「なぜ人間は、こんなに成るんだよ」「こんなに、思いもかけない境遇に落ちるのだよ」。お医者さんの歳は、90歳。杖を突いて、しっかり歩いていた。だが「今日は、何曜日?」。正解が出ない状態になっている。悲しさしか、ない。
★これから「知能テスト」を受ける度に、このお医者さんのテレビの姿を思い出すだろう。「認知症」に、なる人、ならない人、なぜ、そう、なるのか、全く分からない。
★お医者さんの取材は、長期間にわたった。番組を終わるに当たって、テレビが聞いた。「認知症になっての景色って、どんな景色ですか」。お医者さんは先ず一言つぶやいた。「変わらない」。そして、つづけた。「普通だ。前と同じ景色だよ。夕日が沈んでいくとき、普通だ」
★ああ、自然は、雲の上から、サンサンと、光を注いでいる。美しいヒカリを。認知症になっても、あの雲からの光は美しく変わらないのだろう。
「トマさんのことば」を座右の書とさせて頂いている者です。
返信削除長谷川和夫先生のTV番組には感銘を受けました。
以下は、昨年6月にこちらにコメントさせて頂いたものの再掲になります。再掲載の失礼をお許しください。
この検査は、(カトリックではありませんが)クリスチャンの長谷川和夫先生が開発されたもので、全国で広く使われています。
この日記に検査の詳細が書かれましたが、これを読んだ方は検査の予習(?)が出来てしまいます。予習して受けられると正確な評価が出来ません。
そこでお願いですが、次回からは検査の(内容には触れず)結果だけを書くようにしていただけないでしょうか?
http://saitamack.m26.coreserver.jp/tokusyu/tokusyu07.htm