2020年5月27日水曜日

登明「話の小箱」神父館のスピッツ嬢は歌う。残念、讃美歌NO

生まれたばかりのスピッツ、メス犬を、五千円で、ペット店から買ってきた。教会に遊びに来ていた男子の中学生が、「さびしいよ」と言うので、神父さんが買いに行かせたのだ。
その犬に、「チロ」と、名前をつけた。
ところで、神父さんは、少年の頃から、バイオリンを上手に弾く。独学ながら、なかなかの腕前で、地元、都市の交響楽団第二バイオリンを、5年つとめた経験もある。
チロが2歳になった時、神父さんがバイオリンを弾くと、声を合わせて歌うようになった。「あれ?このスピッツ嬢、ヘンだぞ」
長く弾くと、「ウワーーァ」と長く、短いと、「ワン、ワン」と短く、とにかく弾いている間、声高らかに歌いつづけるから、見事なモンだ。神父さんは愉快になった。
教会付属の幼稚園でも、園児や先生たち、父兄にも大人気。愛された。
「ギー、ギーと、成らすだけでは、ダメですな。モーツアルトも、バッハも調子が出ない」。ベートーベンの交響曲第一番、アレグロの部分をよく歌った。どうやら、ベートーベンに共鳴する何かが、あるらしい。
さて、チロ嬢が、9歳になった時、ある日、信徒のNHKカメラマンが、司祭館を訪ねた事から、「こりゃ、オモシロか、ですばい」と、マスコミに注目されるハメになった。
それからが大変、出るわ、出るわ、テレビに、ラジオに、地方版から全国版へ、果ては、その年の10大ニュースにも登場した。
民放テレビにも、3局に出演。一躍、神父館のスピッツ嬢は「話題の女王」となる。神父さんは、ホク、ホク、だよ。
「うちの犬は、人間の2歳ぐらいの言葉の理解力があるんですよ。ただねぇ、これで讃美歌に共鳴してくれると、嬉しいんですがね」。讃美歌は、NOのチロだった。
★1枚の写真が、トマの手元に残っている。
あれから、もう何十年が、経ったであろう。あの頃、トマは、度々、神父さんの所へ行った。神父さんは、聖像造りも、手掛けていた。30cmほどの、色塗りの「聖コルベ神父像」をもらった。神父さんの優しさを忘れない。
★トマは、いま、ホームに居て、朝食前に、必ず見るテレビがある。「きょうの、わんこ」だ。トマは、ネコより、イヌが好き。イヌの中でも、好きなのは「柴犬」だ。スピッツの写真を横にして、柴犬というのは気が引けるが、柴犬は、トマの性格にも合っている。イヌ、ネコは、ホームでは飼えない。職員が時々、ネコを連れて来る。「やっぱり、かわいいよ」
★午前中、ホームで「懇談会」があった。職員から「6月の予定」が告げられる。意見があれば、手をあげる。栄養士さんから「手洗いや食中毒」の注意もあった。
★昼食の時、瀧神父さんに、トマが言った。「昨日の『日記』に『誕生日のこと』を書いたからね」「ああ、そうか。だから今朝、ミサ後に、夫妻から『おめでとう』言われたんだ」「日記のコメントに、2つ、いい事、書いてあったよ。読んで、な」「ウン」

3 件のコメント:

  1. がぶらってぃ2020年5月27日 14:20

    トマさんの書かれたイラストと、写真で拝見する神父さんとチロ姉さんの様子はそっくりですね。
    また、神父さんとチロ姉さんもどことなく似てきているように見えました。犬は飼い主に似るとも
    聞きます。繋がりが寄せてくれるのでしょうか。

    当時の司祭館は音楽にあふれていたのでしょうね。ベートーベンに反応するとは、チロ姉さんには
    周波数がぴたっときていたのでしょう。賛美歌には参加してくれないというのも興味深いところです。
    公私を分ける犬生活を送っていたのでしょうか。そんな愉快なチロ姉さんが、寂しいと言っていた
    中学生の救いにもなっていたように願います。

    トマさんが多くの記録を残してくださっているおかげで、私達は、過去のたくさんのできごとを
    現代において共有することができます。貴重なはたらきと思います。ありがたいことです。

    最近は、時々ホスピタル犬がやってくるような病院もあるようですね。
    特に小児病棟の子供達や強い薬の副作用があるような方々に人気があり、
    苦痛の緩和にも繋がっていると聞いております。
    特別の使命をもったものは、動物であっても神の行いを忠実に
    果たしているとわかります。

    私達に似た姿で救い主を使わしてくださった神を思い、
    私の行い一つ一つが神に繋がっていますよう願います。

    トマさん、今日もジンクーエン。

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  2. こんにちは。はじめてコメントします。

    可愛い犬のお話に、ほっこりとした気持ちになれました。

    昨日は、瀧神父さま、お誕生日おめでとうございます。
    瀧神父さまのご出身地・喜界島、訪れた事はありませんが2つ思い出す事がありました。

    1つは、10年くらい前の吉祥寺教会のミサでの神父様のお話に、喜界島への旅行の事がありました。
    書くと長くなりますが、布教の大切さを感じた、というお話でした。
    もう1つは、友達が喜界島へ遊びに行って、牛乳かと思ったらヤギのミルクが売っていたという話を思い出しました。

    これからも日記(ブログ)楽しみにしております。

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  3. マリア・フランチェスカ2020年5月28日 0:40

    ペトロ瀧憲志神父様
    お誕生日おめでとうございます。
    ますますお元気で
    お健やかな一年でありますように!

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