(登明「話の小箱」お婆さんと神父さんの戦中・戦後の秘話)
★戦争中の出来事。夜の駅のプラットホームで、中年・女性が、男の子の手をひいて、乗り換えの列車を待っていた。
「母ちゃん、列車が、はいってきたよ」
「あれには、乗らないのよ。あれは、戦地へ向かう兵隊さんの汽車だよ」
★そう、話していると、突然、1人の兵隊さんが、あわてたように女性のそばに近づき、「これを、頼みます。送ってください」と短く言うと紙きれを渡して、あっという間に、列車にもどって行った。
★家に帰って、あけてみると、「いよいよ戦地へ行く。元気だから、安心していてくれ」という便りだった。住所も書いてあった。女性は、早速、便りを住所あてに郵送してあげた。
★それから幾年月が経ったであろうか。戦争も終わり、平和になり、女性は、プラットホームの出来事も、すっかり忘れてしまった。
★ある年、見知らぬ男性から年賀状が届いた。「え?だれ?」。あの兵隊さんからだった。女性は、びっくりした。「あの時は、ありがとう。無事、帰還しました」と記してあった。女性は、「よかったわ」と、当時の事を思い出した。多分、兵隊さんは、帰国して、便りの人と連絡して、女性の住所を知ったのであろう。それから何年か、年賀状が届くようになった。女性は、兵隊さんの名前を覚えた。
★それから、また長い歳月が経ち、女性は、お婆さんになり、老人ホームへ入ることになった。入ってみて、オドロイタよ。園長さんの名前が、あの兵隊さんの名前だったのだ。しかも、その兵隊さんは神父さんだった。
★「いやァ、その節は、お世話になりましたなァ」と、老人ホームの園長神父さんは、ペコリと頭をさげて、ニコリと笑った。
★お婆さんは、しみじみ思う。「人間って、どこで、どうして、こんなご縁があり、お世話になるか、わからんモンたい。気持ちよーゥ、お互いが仲よう、せにゃならんと、ですばい。ハ、ハ、ハ」
今日の登明「話しの小箱」にも驚きました。
返信削除すごく不思議なことがありましたね!
感動しました。
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