福岡の私立の大学院生が、訪ねて来た。社会福祉士、精神保健福祉士でもある。若者を侮る勿れ、彼は過去の出来事から、老人の記憶を掘り起こして、教訓を教えてくれる。
★半年ほど前、教授から、セルギウス修道士の「越えて来た道」を紹介された。読んで、感動した。今の福祉の原論は、お世話もあるが、お金も貰う。お金を伴わない福祉が、この本にあった。ポーランドから来て、コルベ神父や、ゼノ修道士など、原爆後に、終戦と共に荒廃した日本人の福祉のため、原爆孤児の救済に働いた。お金も必要だが、奉仕して尽くす。お金のために、やっていない。彼らの中にこそ今、社会福祉の理念があるのではないか。「詳しく、ゼノ修道士のことを知りたい」
★若者から、ゼノさんの名前を聞かされれば、これぞ福祉の原点と、ゼノ修道士を知っている自分は黙っていられない。胸は喜びに奮(ふる)え、若者に協力したい気持ちになった。
★彼は、「十七歳の夏」も読んできた。この本から、5つのことを学んだ、と言う。①省略しない心。②文句のない心。③人との出会い。④孤独と愛。⑤生きて行くことに価値がある。「小崎さんが、原爆の後、ポーランド人修道士のふところに飛び込んだ。抱きしめられた。これが人との出会いですよ」
★コルベ神父とゼノ修道士の長崎上陸の第一歩は、養護施設や、養老施設と、それ以上の大きな福祉事業の広がりにつながった。上陸から87年を経過して、その原点を論ずる若者の存在は、老い行く老人の記憶にヒカリを与えたようで、喜びの日となった。自室に来たのは、10時頃だったが、昼食を知らせるアナウンスがなった。「トマさんのことば」を、2冊渡した。「教授の先生にも差し上げてください」。再会を約して別れた。
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