★テレビで、ある特番があり、作家・太宰治を知る人の話が出た。そのテレビを見た瞬時に思ったのです。太宰治の「人間失格」や、他の本は読む機会がなかったが、ずーっと以前、10年程前に、ラジオの深夜便で、ある夜、太宰治の話が耳に飛び込んできた。語る切り口に心が揺れた。話の最後の部分の、5分間ぐらいしか聞けなかったのが残念だったが、それでも飛び起きて、電気をつけて、すぐにメモした。あの頃は元気があった。それが次の内容だった。
★「太宰は聖書を熱心に読んだ。汝の敵を愛せよ。だが愛せない。太宰は「ことば」から入った「天才」だ。最高の、言葉、天才は、イエス・キリスト。太宰はイエスに惹かれたが、自分は出来ない。罰せられる者である。その後で『人間失格』を書いたが、そこには聖書の言葉は全く出てこない。だから現代のフアンが惹きつけられるのだ。完全には他人を愛せないから、せめて周りの人を大事にしていこう」。これが内容だった。誰の話だったか、わからない。太宰といえば、絶望感のイメージだったが、「聖書を熱心に読んだ」部分に、心が惹かれた。
★ニンゲンって、心の振幅は、誰でも同じじゃないか。自己には欲望があり、尽くしても、果たしても、満たされぬ渇きある。絶望と、希望。取り巻く人間にも、悩み、苦しむ。その中で救われたい。本当の幸福を求めたい。ニンゲンの叫びが聞こえてくる。「せめて周りの人を大事にしていこう」。周りの人が冷たく引く原因は、自分の根幹にあるのでないか。自分を正せば、事は丸く収まることもある。
★テレビで、太宰治を知る人は、「彼は、低い声で、ゆっくり話し、やさしい人だった」と語っていた。