温泉街の裏通りを歩いて、山沿いを行くと、共同湯がある。山の学校に居た時代は、よく通った穴場だった。久しぶりに訪ねてみた。昔からのお湯。地元の人たちだけが入る。帽子をかぶって行った私を、皆はジロジロ見た。男湯、女湯。がたピシ、木戸を開けて入ると、低い番台に男性の老人が毛布に包まれ、背中を低く呼吸している。「いくらですか?」「150円」。板の間にあがると、着物入れの箱があった。年代を思わせる。「このハコは、いつ作られた?」「昭和12年」「ええ、そーなんだ。12年といえば、小学3年だったか」。ハコに着物を押し込んだ。この共同湯は、湯の温度が高温な事で定評がある。湯船は、2m四角の湯が、2つある。1つは、43度はあるだろう。もう1つは、それより熱い。「たまらんわい」。直ぐには、入れない。ゆっくり、入ったり、出たり、踊ったり、初心者には時間がかかる。4,5人の男が、じーっと、こちらを見る視線を感じる。背中を彼らに見せた。大きなキズが、3箇所もある。「参ったか」と自慢はしないが、暗黙のうちに、威厳を示した。湯につかると、広い窓から、朝陽が、さーっと光がまっすぐに入って、湯に、キラキラと揺れていた。癒される朝となった。この日は、富士屋さんの湯には入らなかった。
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